「ブルー・マイナー」について
  
  
 名曲『CLASS MATE』で描かれた3Bのふたりの関係がとても好きです。友達じゃなくて、パートナーでもなくて、ただのクラスメイト。お互いの話を本人からじゃなく噂で聞いて、マジ? って話半分に思ってるのも、絶妙な距離感で最高です。
 ペアプリで丸井くんは仁王くんについて「つーかダチいんのか?」とか言ってて、まず自分は友達じゃないし、仁王くんのクラスでの交友関係も知らない。そんな3B万歳です。今回、ふたりを書くにあたって込めた解釈を備忘録的にまとめました。以下、だらだらと語ります。
 
1、弾んだ声
 仁王くんが差し出してくれたガムを見て、「くれんの?」と人並みに弾んだ声を出す丸井くん。
 それに対して、あげるガムは「一枚な」と、パッチンガム詐欺の準備を整える仁王くんの声のトーンを、丸井くんは「大体いつも通り」に「低い」と感じています。
 柳生くんは、仁王くんが詐欺のときに声のトーンが少し下がると言っていましたが、あの仁王くん本人すら気づかなかったようなその癖は、パートナーの柳生くんだから気づけたもの。丸井くんが聡いひととはいえ、友達でもなくパートナーでもない、このふたりの距離感で気づけるようなものではないんじゃないかと思いました。
 
2、パッチンガム詐欺
 1ヶ月で14回というものすごい回数、丸井くんは仁王くんからパッチンガムの衝撃を受け取っているわけですが、それをすべて同じパッチンガムで行うなんて芸のないことは、仁王くんはしないような気がしました。
 市販のおもちゃをそのまま使うんじゃなく、彼のイリュージョンよろしく、完璧にガムに見えるものを仕込んでくるから、また偽物だろうとは思いつつも、丸井くんも毎回手を伸ばしてみる気になるんだと思います。
 あとはコミュニケーション的なものも普通にありそう。むしろメインそう。丸井くんは、「ジャッカルが!」「俺かよ!」とか、玉川くんの名字いじりからの「玉川です」とか、俺とあいつの持ちネタ、みたいなの好きなので、それの仁王くん版みたいな気持ちもあって乗っかってるのでは。非常にほほえましくて素敵です。
 
3、仁王くんの「音楽」嫌い
 好きな音楽にジャズを挙げるような人が、音楽そのものを嫌いなわけはないですよね。仁王くんは学校での「音楽」という科目や授業や、はたまた担当教師が嫌いだったりするのかもと思いました。
 音楽そのものは好きでも、教科書に載っている曲を皆で揃って合唱したり、ましてやクラス全員にじろじろ見られながら決められた曲をリコーダーで発表するのは嫌いってこと、全然あると思います。
 
4、似ていたり似ていなかったり
 暑さに抵抗して審判台の影に隠れた仁王くんを、丸井くんと赤也はいっしょに笑いましたが、まるっきりは趣味などのツボは似ていながらも、本質の考えかたは全然似ていないと思うんです。
 丸井くんと仁王くんのふたりは、それとは逆なところがある気がしてます。
 陽キャの丸井くんと一匹狼の仁王くんなので、一見、ふたりのどの要素も交わっている感じはしない。でも、状況や人間関係を俯瞰的に見て冷静に動けるところとか、自分がどう振る舞えば相手がどう捉えるか知っているところとか、対人関係の根底の部分はとても似てる感じ。それをもってそれぞれ選ぶ振る舞いは全然違うけど。
 そういう人ってつまり、掴めなくてミステリアスな人ってことになるけれど、丸井くんは陽キャというキャラクターもあって、掴めない、という印象を持たれることは少ない。本人としても、丸井くんの俯瞰の視点ありきの振る舞いは素で無意識にやってることで、そんな自覚はない。
 だから、仁王くんに「よくわからない奴」とか言われてももちろん理解できないし、むしろ、いかにも「よくわからない奴」代表みたいな日々の過ごしかたをしてる仁王くんに言われては尚更、それはそっちじゃん、としか思えない。
 『CLASS MATE』でお互い「読みとれない」と思っているところが個人的にめちゃくちゃアツいです。
 丸井くんは、自分と仁王くんの似ているところになんか気づかないまま、たとえば仁王くんが日差しを苦手そうにしているところを見ては、自分と彼との違いばかりを自覚していそうな気がします。
 
5、青色と光  
 青色が好きで海が好きな仁王くん、泣けるほど素敵です。好きな色の音楽プレイヤーを使って、好きな曲をきいて、その画面の光をこっそり腕のなかに隠している仁王くん。教室にある光は窓の外からのものだけかと思っていたら、隠されていたその光を見つけた丸井くん、のふたりが書きたかった。
 
 とりあえず以上です! 本編を書いたのは数年前ですが、チームメイトで、ただのクラスメイトなふたりを書けてすごく楽しかった記憶があります。たまに自分で読み返したとき、なんだか書いてよかったなぁと特に思える話でもあります。
 タイトルは最後に仁王くんが聴いていた曲の名前です。