関東決勝S3後について
 
 
 関東決勝S3後、真田から柳さんへの鉄拳制裁を赤也がラケットで止めたシーンについて。赤也は誰を庇ったのか、形だけ見ると柳さんだけを庇ってますが、個人的には「三強」を庇っているのではないかと思ってます。(赤也はそんなの無自覚だと思うけど。)
 無敗の掟の一部としての鉄拳制裁のことは、立海全員が受け入れているし、赤也もそう。
 赤也は越前との草試合の結果で、真田に殴られたあと、真田を睨みつけたりはしているけれど、あれは「真田に殴られた」ことへの表情ではなく、草試合後の放心状態ののちの、本当はずっと胸の内に湧き出ていた「越前に負けたことへの悔しさ」ベースの表情だと思います。(S3後の単行本おまけページで、赤也のラケットに手ぶつけて痛そうにしてる真田と、「根にもつタイプ」らしい赤也の描写があるけど、さすがにこの仕返しはサブ要素であると信じたい…笑)
 負けたら鉄拳制裁、の仕組みを本当は受け入れているからこその、自分が不二に負けたあとの「俺を殴ってください」だろうし。
 立海が全員、鉄拳制裁の存在を受け入れてるのは、罰をつくることで、無敗の掟を口約束ではなく本当の掟たらしめたいから。目に見える罰があるからこそ、そこに掟が存在するのがわかる。言い換えればプレイヤー以外にもその覚悟が伝わる。
 
 もしも鉄拳制裁の制度、ひいては「掟」が存在しなくて、皆が幸村くんと無敗の「約束」をしただけだとしても、レギュラーには全員、自分が負けて幸村くんとの「約束」を破るのはすごく嫌だという共通の意識は絶対にあった。でも、それは残されたプレイヤーのみが実感する感情で、目に見えないものだから幸村くんには伝わらない。約束を守るという覚悟を、外から見てもわかる形=掟にしなければいけない。幸村くんは今はプレイヤーの共通の意識の外にいるから。
 そして、真田以外の残されたレギュラーは、自分たち制裁される側よりも、制裁する側の真田の荷物がいちばん重くて、いちばん大変なこともわかっている。
 そういう制度でこれまでやってきて、関東大会の決勝。柳さんがS3で敗北して、同じ三強であろうと、真田は柳さんを殴らないといけない。幸村くんに捧げるための掟があるから。それでも赤也は「結果的に立海が全国3連覇すりゃ」「別にいー」と言って制裁を邪魔した。ここで注目したいのが、赤也は「全国」と言っているところです。立海が関東大会を優勝して、それを手術前に幸村くんに報告できればいい、ではなく、幸村くんの復帰後「全国3連覇すりゃ」いいと言っているところ。赤也の制裁邪魔ムーブの無意識の部分には、幸村くんのいる立海のイメージが浮かんでいるのです。
 S3後、真田が柳さんに鉄拳制裁という罰を与えるべき=無敗の掟が存在すべきなのは、幸村くんに自分たちの覚悟がちゃんと伝わらないといけないから。幸村くんがひとりで病気と戦っているとき、テニスができる自分たちが精一杯のことをして待っていることを示したいから。
 それでも、赤也は鉄拳制裁を止めた。柳さんは真田に殴られる必要はないし、真田も柳さんを殴る必要はない=ふたりのあいだに罰、ひいては掟が存在する必要はない=「掟」という覚悟の表明がなくとも、真田と柳さんのふたりの想い、「約束」を守ろうとする気持ちを幸村くんはわかっている、という三強の絆への信頼ゆえだと思います。「精市との約束を無にして」ないって赤也が思ってるから。だと個人的には思います。そんな風に尊敬して、信頼してる相手である三強に勝ちたい赤也って、ほんとかっこいいですね。ヒーローです。毎回語ったあと、いつも王子様を崇拝して終了になっちゃってますが、今回もそうなりました。笑 終わります!